事業資金の調達法とは?効果的な資金確保の方法をご紹介

事業を運営する中で資金不足や新規事業の展開、拡大を図る際、多くの経営者がまず考えるのが資金の調達方法です。

資金調達と言っても、方法は多岐にわたります。それぞれの方法には利点と欠点が存在するため、慎重な選択が必要です。

事業資金を効率的に調達するためには、さまざまな方法を比較検討し、会社のニーズに最も適した方法を見つけることが求められます。

そこで今回は、資金調達の手段としての選択肢を「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「アセットファイナンス」に分けてご紹介します。ぜひ、貴社に最適な方法を探してみてください。

資金調達の基礎知識:3つの基本タイプ

事業資金とは、日々の運営資金と設備資金を組み合わせたもので、事業活動に欠かせない資金全般を指します。

運営資金は日常の業務を続けるために必要な資金のことを指し、一方で設備資金は設備や機器の購入などに充てる資金です。

このように資金の種類を区別することで、外部からの資金調達を行う際、使用目的によって調達条件が異なるため、効果的に資金を確保できる可能性が高まります。

運営資金の算出方法

運営資金の必要額は事業の規模や業種によって異なりますが、一般的には以下の計算式で算出します。

運営資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務

たとえば、売上債権が500万円、棚卸資産が700万円、仕入債務が200万円の場合、計算式は「500万円 + 700万円 - 200万円」となり、必要な運営資金は1,000万円になります。

負債を増やして資金を調達する「デットファイナンス」

デットファイナンス(Debt Finance)は、銀行からの融資や社債の発行などで会社の負債を増やすことによって資金を確保する手法です。

この方法の利点は、まず「調達先の選択肢が豊富である」点にあります。銀行や政府機関の他、家族や知人からの支援も含まれるため、幅広い資金源にアクセスが可能です。

また、「レバレッジ効果が期待できる」点もメリットです。借入金を活用することで、自己資本だけでは得られない利益を生む可能性があります。

一方で、「返済義務がある」という点がデメリットとして挙げられます。決められた期限内に必ず返済を行う必要があり、企業にとって負担が大きくなる場合もあります。

株主資本を増やして資金を調達する「エクイティファイナンス」

エクイティファイナンス(Equity Finance)では、株式を発行して会社の株主資本を増やすことで資金を調達します。

最大の利点は「返済義務がない」ことで、経営状況に不安があっても利用しやすく、将来のキャッシュフローに悪影響を与えません。

また、「ネットワーク拡大の機会が増える」点も魅力です。企業に出資する投資家は、企業の成長を支援するため、取引先や協力企業を紹介するケースもあり、結果的に事業のネットワークが広がる可能性があります。

デメリットとしては、「経営権が他者に移る可能性がある」ことが挙げられます。株式の持分次第では、経営権が投資家に移り、場合によっては企業が合併や買収される可能性も出てきます。

資産を売却して資金を得る「アセットファイナンス」

アセットファイナンス(Asset Finance)とは、ファクタリングや事業譲渡などで保有資産を売却して現金化し、資金を調達する方法です。

まず「迅速な資金確保が可能である」点がメリットとして挙げられます。例えば、売掛債権や保有する設備など、すぐに現金化できる資産であれば短期間で資金調達が可能です。

さらに「自社の信用力に関係なく資金を得られる」点も利点です。アセットファイナンスでは資産の価値を重視するため、企業の信用度に依存せずに資金を確保できます。

ただし、「保有する資産が売却できる保証はない」という点がデメリットです。資産価値が認められなければ、売却できない場合や、価値よりも低い価格で買い取られるリスクもあります。

その他の資金調達手段

その他の資金調達方法には、補助金・助成金、そしてクラウドファンディングが挙げられます。

補助金や助成金は、政府や地方自治体、民間団体が提供する資金援助で、一定の条件を満たして審査に通過すると資金を得られます。また返済義務がないため、事業支援として有効です。

一方でクラウドファンディングは、インターネットを活用して不特定多数の支援者から資金を集める方法です。事業や商品に共感した人々から資金を募る仕組みで、応援する人が多いほど集まる資金も増えるため、事業内容によっては資金調達が順調に進む可能性があります。

負債を増やして資金を集める7つのデットファイナンスの方法

デットファイナンスには、主に以下の7つの方法があります。

銀行からの融資

銀行の融資は、最も一般的なデットファイナンスの手法です。銀行から直接借り入れる「プロパー融資」や信用保証付きの「信用保証付き融資」の2種類に分かれます。審査を通過するには信用力の向上が重要です。

メリット

銀行融資のメリットには、主に「低金利」が挙げられます。他の資金調達方法に比べて低めに設定されることが多く、資金調達を検討する企業にとって大きな魅力です。

デメリット

銀行からの融資のデメリットは、「融資実行までに時間がかかる」という点です。審査が厳しく、結果が出るまでに数週間、場合によっては1か月以上かかることもあります。

信用金庫からの融資

信用金庫とは、地域住民が会員となって出資し、地域の経済活性化を目的に活動している非営利組織です。銀行に比べて融資の基準がやや低めであることから、地元企業や個人事業主にとって資金調達の一つの選択肢です。

メリット

信用金庫融資のメリットは、「地域密着型で中小企業や個人事業主が利用しやすい」という点です。非営利のため、地域に貢献する企業に対しては柔軟な対応を行い、企業の規模に関わらず融資を提供する傾向があります。

デメリット

信用金庫からの融資のデメリットは、「地域に根差した事業のみが対象となる」という点です。地域支援を目的とするため、地元以外の事業への融資は難しい場合があります。

日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫は、財務省が管轄する公的な金融機関で、民間での融資が困難な中小企業や新規開業者向けに多様な融資制度を提供しています。

メリット

日本政策金融公庫からの融資のメリットは、「銀行よりも借りやすい」点です。銀行融資が難しい場合でも、日本政策金融公庫では通過しやすいケースもあり、創業時には無担保・無保証で融資を受けられる点が大きな魅力です。

デメリット

日本政策金融公庫の融資のデメリットは、「審査期間が比較的長い」という点です。融資内容によりますが、審査には数週間から1か月ほどかかるため、迅速な資金が必要な場面には適しません。

自治体の制度融資

自治体が行う制度融資は、自治体、金融機関、そして信用保証協会が連携し、地域企業の支援を目的に行われる融資制度です。

メリット

自治体の制度融資のメリットは、「低金利で利用できる」という点です。多くの場合1%〜3%の金利で、長期間の借り入れができる場合が多いです。

デメリット

自治体の制度融資のデメリットとしては、「融資額に上限が設けられている」点が挙げられます。多額の資金が必要な場合には、制度融資だけでまかなうことが難しい場合があります。

少人数私募債の発行

少人数私募債は、限られた少人数の投資家向けに社債を発行し、資金を調達する方法です。発行総額はおおむね1億円未満とされています。

メリット

少人数私募債のメリットは「社債発行総額や利率の設定が自由である」ことです。さらに「審査がない」という点で、資金を素早く確保できるのも特徴です。

デメリット

少人数私募債のデメリットは、「元本を一括返済する必要がある」という点です。返済時には元金が一度に必要となるため、十分な返済計画が求められます。

ビジネスローン

ビジネスローンは、金融機関が提供する法人向けの融資商品で、保証人や担保が不要で審査が比較的簡単なため、迅速な資金調達が可能です。

メリット

ビジネスローンのメリットは「迅速に資金調達できる」点です。早ければ申込から数日で資金が手に入るため、急な資金ニーズに対応しやすい方法です。

デメリット

ビジネスローンのデメリットとして、「高金利であること」が挙げられます。返済負担が大きくなることを考慮して利用する必要があります。

マル経融資

マル経融資は、商工会議所の推薦により受けられる融資制度です。小規模事業者の支援を目的としており、無担保・無保証で利用でき、上限2,000万円までの融資が可能です。

メリット

マル経融資のメリットは「低金利である」点です。商工会議所のサポートを受けられるため、事業に必要な書類作成や助成金申請においても支援が期待できます。

デメリット

マル経融資のデメリットは、「資金使途が制限されている」という点です。運転資金や設備資金としての使用が原則であり、申請時に明示した用途以外の目的で使用することはできません。

資本を増やして資金を集める4つのエクイティファイナンス

エクイティファイナンスには、主に以下の4つの方法があります。

自己資金

まず検討すべきは、経営者自身の個人資産を使う自己資金です。これは、自らの資金を事業の資本とする手法で、資金調達の一つの形態といえます。

メリット

自己資金のメリットは、「経営権を保ちやすい」という点です。例えば、株式発行で資金調達をする場合、株主が経営権を持つリスクがありますが、自己資金ならその心配がなく、自分の方針に沿って事業を進められます。

デメリット

自己資金のデメリットは、「調達額に限りがある」ことです。個人資産で事業資金をすべて賄えない場合は、他の資金調達方法を併用する必要があります。

エンジェル投資家

エンジェル投資家とは、創業間もない企業に対して出資する個人投資家のことです。企業の将来性やビジョンに基づき出資するかどうかを決定します。

メリット

エンジェル投資家からの出資のメリットは、「迅速に資金調達ができる」点です。融資のように審査がないため、出資が決まれば即座に資金が得られます。

デメリット

エンジェル投資家からの出資のデメリットは、「経営に干渉されるリスクがある」点です。キャピタルゲインを目指す投資家は、利益を優先する経営を求める傾向があり、企業の方針に影響を及ぼす場合もあります。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルは、成長が期待される企業への出資を専門とする投資会社です。企業の将来性や収益力を重視し、創業初期の企業にも投資することが多いです。

メリット

ベンチャーキャピタルのメリットは、「返済義務がない」点です。出資を受ける代わりに株式を譲渡しますが、返済が不要であるため、創業初期の資金負担を軽減できます。

デメリット

ベンチャーキャピタルのデメリットは、「持株比率が低下する」ことです。株式譲渡により経営者の発言権や決定権が影響を受ける場合があります。

他企業からの出資

他の企業に株式を譲渡し、出資を受けることで資金調達を行う方法です。

メリット

他企業からの出資のメリットは、「出資先の協力が得られる可能性がある」点です。資金面だけでなく、技術、人材、営業支援などの協力が見込めます。

デメリット

他企業からの出資のデメリットは、「経営権を握られるリスクがある」ことです。持株比率が過半数を超えると、事実上の経営権が他企業に移り、経営の自由度が損なわれる可能性があります。

資産を売却して資金を調達する5つのアセットファイナンス

アセットファイナンスには、主に以下の5つの方法があります。

ファクタリング

ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に売却して現金化する資金調達手法です。手数料は発生しますが、迅速に資金調達ができる点が特徴です。

メリット

ファクタリングのメリットは、「償還請求権がない」ことです。売掛先からの支払いが滞っても、ファクタリング会社が責任を持つため、利用者は返還責任を負いません。

デメリット

ファクタリングのデメリットは、「売掛金の範囲内でしか資金が調達できない」点です。売掛金以上の資金が必要な場合には他の手法との併用が必要です。

手形割引

手形割引は、決済前の受取手形を割引価格で金融機関や専門業者に売却し、早期資金化する手法です。

メリット

手形割引のメリットは、「迅速に資金を得られる」ことです。支払いサイトが長い場合でも、決済日前に手形を資金化できるため、資金不足を解消しやすくなります。

デメリット

手形割引のデメリットは、「不渡りが発生した際に責任を負う」ことです。ファクタリングと異なり、手形割引は償還請求権があるため、不渡りの際には返済が必要です。

セール&リースバック

セール&リースバックは、不動産や設備を金融機関に売却し、リース契約により資産を利用し続ける手法です。

メリット

セール&リースバックのメリットは、「迅速な資金調達が可能である」点です。比較的短期間で手続きが進み、必要な資金を確保できます。また、資金使途に制限がないため、自由に活用できます。

デメリット

セール&リースバックのデメリットは、「売却価格が割安になることがある」点です。相場より安い価格での売却が一般的で、期待する資金額に届かない場合もあります。

資産の売却

不動産や機械などを直接売却することで資金を得る方法です。セール&リースバックと異なり、売却後はリース契約がありません。

メリット

資産売却のメリットは、「維持コストを削減できる」点です。不動産を売却すれば管理費や固定資産税、保険料などの支出が削減でき、キャッシュフローを改善できます。

デメリット

資産売却のデメリットは、「売却完了までに時間がかかる場合がある」点です。買い手がすぐに見つからないと、資金調達が長引く可能性があります。

M&A(事業譲渡)

M&Aは、事業を他社に譲渡して資金を得る方法です。

メリット

M&Aのメリットは、「大きな資金を調達できる可能性がある」点です。事業全体を売却するため、契約内容によっては多額の資金を得られます。

デメリット

M&Aのデメリットは、「契約成立までに時間がかかる」点です。事業譲渡の検討から契約成立までには半年以上かかる場合も多く、迅速な資金調達には不向きです。

その他2つの資金調達方法

デットファイナンス、エクイティファイナンス、アセットファイナンス以外の資金調達方法も存在します。

補助金・助成金

補助金・助成金は、国や自治体、民間団体が提供する支援金で、条件を満たせば返済不要で資金を得ることができます。

メリット

補助金・助成金のメリットは、「企業の信頼度を高めることができる」点です。審査を通過したことで、企業の価値が認められ、今後の資金調達にも好影響を与えます。

デメリット

補助金・助成金のデメリットは、「後払いが基本である」点です。

クラウドファンディング

クラウドファンディングでは、インターネットで支援者から資金を集めます。商品や夢に共感する支援者が多いほど多くの資金を調達できます。

メリット

クラウドファンディングのメリットは、「ファンを獲得できる」ことです。広範な層に事業をアピールでき、支援者がファンとして継続的な支援者になる可能性もあります。

デメリット

クラウドファンディングのデメリットは、「目標資金額を達成できない可能性がある」ことです。

まとめ

事業資金を集める手段は「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「アセットファイナンス」の3つがあり、それぞれに適した方法を比較検討することが重要です。

タイトルとURLをコピーしました