中小企業・個人事業主が活用すべき事業資金のサポート【補助金・助成金】

企業の運営を円滑に進め、さらなる発展を目指すには、設備への投資はもちろん、従業員の労働環境の向上にも取り組む必要があります。

しかし、新たな設備導入や職場環境の整備には多額の資金が必要となり、資金面の負担から踏み切れないと感じる方も多いのではないでしょうか。

もし心当たりがあるなら、事業運営に伴うコストの一部をカバーしてくれる支援制度の利用を検討するのもひとつの手段です。

本記事では、中小企業や個人事業主が事業資金として利用できる支援制度について説明し、「補助金」や「助成金」といった似た制度の違いについても解説します。

ぜひ最後までお読みください。

事業資金として活用可能な支援金はあるのか?

給付金とは、特定の条件下で国や自治体などから提供される財源のことで、緊急性の高い状況下で支給される特徴があります。

特に返済が不要であり、使用目的も広いため、事業資金として活用しやすい点が魅力です。

たとえば、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済的支援として給付金が提供されていましたが、2024年3月現在、事業者向けの新たな給付金制度は用意されていません。

一方で、「補助金」や「助成金」といった同様の支援制度も存在し、それぞれ提供条件や利用目的が異なるため、違いを明確に理解することが重要です。

以下では、これらの制度の違いを詳しく解説していきます。

給付金とはどのような制度か?

給付金は、国や地方自治体が提供する財源で、主に緊急事態への対応として支給されることが一般的です。

要件を満たせば受給できる仕組みであり、企業だけでなく個人も利用対象となるため、審査基準が比較的柔軟な点が特徴です。

また、「支援金」や「協力金」といった名称で提供される場合もありますが、これらも返済不要の財源として同様に活用可能です。

補助金・助成金との相違点

給付金とよく似た制度として「補助金」や「助成金」が挙げられますが、それぞれ目的や審査プロセスが異なるため、明確な区別が必要です。

給付金

  • 目的:事業継続のための資金支給
  • 交付元:国や自治体
  • 利用条件:一定の要件を満たすこと
  • 入金時期:先払い
  • 返済義務:なし

補助金

  • 目的:事業拡大や新規プロジェクトの費用補填
  • 交付元:経済産業省など
  • 利用条件:審査をクリアすること
  • 入金時期:後払い
  • 返済義務:なし

助成金

  • 目的:雇用改善や労働環境整備への支援
  • 交付元:厚生労働省
  • 利用条件:要件を満たすこと
  • 入金時期:後払い
  • 返済義務:なし

補助金や助成金は事業者向けの支援策であり、審査や条件が付随しますが、それぞれの制度を活用することで、事業運営の資金繰りに役立てることが可能です。

かつて存在した給付金の具体例

冒頭で述べた通り、現時点では中小企業や個人事業主が利用できる給付金制度はありません。

しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済的影響を緩和するため、2021年頃には複数の給付金制度が展開されていました。

ここでは、過去に提供されていた主な給付金について説明します。

新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金

新型コロナウイルス感染症によって収入や資産が大幅に減少した世帯を対象に提供されたのが、「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」です。

月収や資産が一定基準を下回り、就職活動中または経済的に自立することが困難な世帯が対象で、家族構成によって異なりますが、月6万円から10万円程度が支給されていました。

新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金

この支援金は、小学校が休校した際、保護者が仕事を休み子どもの世話に専念せざるを得ない場合に、休業中の賃金を補填する目的で支給されました。

日額4,177円が一律で支給される仕組みとなっており、家庭の収入が一時的に途絶えるリスクを抑える役割を果たしました。

持続化給付金

「持続化給付金」は、コロナ禍で事業収入が大幅に減少した中小企業や個人事業主を支援するための制度です。

前年同月比で売上が50%以上減少した場合、中小企業や小規模事業者は最大200万円、個人事業主は最大100万円が支給されました。

この支援金により、多くの事業者が経営難を乗り越えるための資金調達を実現しました。

現在利用可能な補助金について

給付金制度は現時点では存在しませんが、補助金や助成金を活用することで、事業活動に必要な資金を確保できます。

ここでは、補助金の基本的な仕組みや注意点について詳しく解説します。

補助金利用時の注意点

補助金をうまく活用すれば、資金繰りが厳しい場合でも事業拡大や設備投資を実現することが可能です。

ただし、補助金を利用する際にはいくつかの留意点を押さえておく必要があります。

後払い制度に基づいている

補助金は通常、後払い方式で提供されます。

そのため、まずは自社の資金を投資や設備購入に充て、その後補助金の申請を行う形となります。

補助金の入金時期を誤って見積もると、資金不足に陥る可能性があるため、事前に十分な資金計画を立てることが重要です。

対象期間が限定されている

補助金には必ず対象となる事業期間が設定されており、この期間外の支出については補助金の対象外となります。

補助金の申請を行う際には、事業計画を正確に把握し、補助対象期間内に支出を収めることを心がけましょう。

事後の手続きも重要

事業が終了した後、補助金対象となる経費を整理し、明確な報告書を作成する必要があります。

これには領収書や関連書類の提出も含まれ、不備がある場合は補助金が受け取れない可能性があるため注意が必要です。

補助金の基本的な流れ

補助金を活用するためには、事前準備や申請手続きが重要です。
ここでは補助金申請から交付までの流れを具体的に説明します。

1. 公募開始

補助金の公募は一般的に2月頃からスタートし、6月までにはほぼすべての補助金が出揃います。
申請期間は1か月程度に設定されている場合が多いため、早めに対象となる補助金を見つけ、事前準備を行うことが大切です。

補助金の種類によって申請条件や目的が異なるため、各公募要領を注意深く確認しましょう。

2. 申請書類の準備と提出

補助金申請には、応募申請書や事業計画書、経費明細書などが必要です。
これらの書類は電子申請や郵送により提出されますが、補助金によって提出方法が異なる場合もありますので、公募要領を確認して適切な方法で申請を行いましょう。

申請後、各補助金の事務局で書類の審査が行われます。

3. 審査・採択通知

事務局による審査が完了すると、採択結果が通知されます。
採択された場合、「交付申請」を行い、交付額が決定します。

この際、補助金の上限額が減額されることもあるため、通知内容をしっかりと確認しましょう。
もし予定額が減額されていた場合には、事業計画の見直しが必要となる場合もあります。

4. 事業開始

交付申請が受理されると、いよいよ事業のスタートです。
ただし、事業開始日は「交付決定日」以降となるため、それ以前の支出については補助金の対象外となる点に注意しましょう。

対象となる支出の証明には領収書が必要となるため、必ず保管しておきましょう。

5. 中間検査

中間検査は、事業進捗や支出内容が計画通りであるかを確認するためのプロセスです。
この検査では、事業の進展状況や書類の整備状況が審査され、不備がある場合は事務局からアドバイスが提供されます。

このタイミングで、書類や証拠資料をしっかりと整理しておくことが、後の確定検査に役立ちます。

6. 事業完了と報告書提出

事業が完了したら、完了報告書を作成し、事務局へ提出します。
この報告書では、補助金が正しく使用されたことを証明するため、経費の内訳や事業の成果を明確に記載する必要があります。

7. 確定検査と補助金の受給

完了報告書の内容が審査され、適切に事業が実施されたと判断されると補助金が支給されます。
なお、補助金の対象経費に関する証拠書類や領収書は、事業完了後も5年間保管することが求められます。

代表的な補助金の例

補助金を活用することで、事業の拡大や効率化を図ることができます。
以下に、現在利用可能な代表的な補助金を紹介します。

小規模事業者持続化補助金(一般型)

「小規模事業者持続化補助金(一般型)」は、働き方改革や新制度への対応、販路拡大などの取り組みに対する支援制度です。

対象となる事業者は、持続的な販路開拓を目指す小規模事業者や一定条件を満たすNPO法人などで、支援額は最大200万円に設定されています。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

この補助金は、中小企業や小規模事業者が革新的なサービスや商品を開発するための投資を支援します。
補助率は2/3で、設備投資を行う際に特に有用です。

IT導入補助金

「IT導入補助金」は、業務効率化やデジタルトランスフォーメーションを推進する中小企業を支援します。
ITツールの導入にかかる経費やセキュリティ対策の費用も補助対象となります。

助成金の活用で事業を強化する

補助金の利用には審査を通過する必要があるため、申請が通らなかった場合や適用外の場合には「助成金」の活用がおすすめです。
ここでは、助成金について補助金との違いや基本的な利用手順を詳しく解説します。

補助金と助成金の主な相違点

助成金と補助金を区別することは、適切な制度を選ぶために重要です。以下では、それぞれの特徴を比較して説明します。

目的と管轄の違い

  • 補助金は、経済産業省が主に管轄し、新規事業の立ち上げや研究開発など事業成長を目的としています。
  • 助成金は、厚生労働省が監督し、雇用促進や労働環境の改善、人材育成を支援するために用意されています。

金額と利用条件の違い

  • 補助金は、支給額が数百万円から数億円に上ることがあり、新たなプロジェクトの拡大に適しています。
  • 助成金は、数十万円から最大100万円程度と支給額が比較的少額で、雇用関連の取り組みに焦点を当てています。

申請と受給条件の違い

  • 補助金は、審査を通過しなければ受給できません。採択されるかどうかは提出された計画書の内容次第です。
  • 助成金は、要件を満たしていれば原則として支給されるため、比較的利用しやすい特徴があります。ただし、労働法令を遵守していることが必須です。

助成金申請の基本的な流れ

助成金を受け取るには、正確な準備と手続きが欠かせません。以下では、助成金の申請から受給までの基本的な手順を説明します。

助成金申請の前提条件

助成金を申請するには、次の条件を満たす必要があります。

  • 雇用保険および社会保険に加入していること
  • 正社員が少なくとも1名以上在籍していること
  • 労働法令を遵守していること

必要書類には「被保険者資格取得の届出」「支給要件申立書」「支払方法・受取人住所届」が含まれます。これらの準備を事前に行っておきましょう。

1. 実施計画の作成・届出

申請する助成金ごとに定められたフォーマットを使用し、実施計画を作成します。この計画書には、助成金を利用する目的や具体的な計画内容を記載します。
作成した計画書を所定の機関へ提出することが第一歩となります。

2. 計画の実行

助成金利用にあたり、計画に沿った行動を開始します。例えば、教育訓練助成金を申請した場合、セミナーや研修に参加したことを証明する領収書や参加証明書などを確保しておきましょう。

3. 支給申請と審査

計画が終了したら、助成金支給の申請を行います。この際、支給申請書と必要資料をそろえて、ハローワークや労働局に提出します。
審査では、提出書類に不備がないかが確認されます。不備がある場合、修正や追加資料の提出が求められる場合があります。

4. 支給

審査をクリアすると支給決定通知が届き、助成金が振り込まれます。支給金額が計画通りであるかも併せて確認してください。

代表的な助成金の例

以下に、現在活用可能な代表的な助成金を紹介します。

キャリアアップ助成金

「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用者の正社員化や労働条件の改善を目的としており、取り組みを行った企業に支給されます。

業務改善助成金

「業務改善助成金」は、生産性向上を目的とした設備投資を支援し、事業所内の最低賃金を引き上げた企業が対象です。
これにより、事業者の成長と雇用環境の向上が期待されます。

人材開発支援助成金

「人材開発支援助成金」は、従業員が専門的スキルを学ぶための職業訓練や研修にかかる費用を補助します。
対象には7つのコースがあり、業務効率向上やリスキリングの取り組みにも対応しています。

助成金の利用で事業を拡大する

助成金は雇用の維持や環境改善を目指す事業者にとって、資金繰りをサポートする心強い制度です。
ここでは、代表的な助成金の種類とその活用方法を詳しく解説します。

キャリアアップ助成金

「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用者の正社員化やスキルアップを目的とした取り組みを支援する助成金です。
たとえば、アルバイトやパートタイム労働者を正社員として雇用契約を切り替える場合や、処遇改善を図る取り組みを行う場合に支給されます。

この助成金の活用により、従業員の安定した雇用環境を構築し、企業の持続的な発展につなげることが可能です。

業務改善助成金

「業務改善助成金」は、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた中小企業や小規模事業者を対象に、設備投資の費用を補助する制度です。

設備投資により業務の効率化や生産性向上を実現することで、売上の拡大やコスト削減につながり、最終的には従業員への賃金アップが可能となることを目指しています。

具体的な例として、生産設備の購入やITツールの導入が挙げられます。

人材開発支援助成金

「人材開発支援助成金」は、従業員の能力開発や職業訓練を支援する制度です。
企業が従業員に対して実施した研修や職業訓練の費用や、訓練期間中の賃金の一部が助成対象となります。

この助成金を利用することで、従業員のスキルアップを図り、業務の質を向上させるとともに、従業員のモチベーション向上も期待できます。

人材開発支援助成金には、職場内訓練(OJT)を組み合わせたコースや、デジタル技術の習得を支援するコースなど、さまざまな種類があります。

補助金・助成金の効果的な活用方法

補助金や助成金を適切に利用することで、資金調達や事業の発展に大きな効果をもたらすことが可能です。

しかし、制度ごとに利用条件や申請手順が異なるため、事前準備を入念に行うことが重要です。

補助金・助成金申請のポイント

補助金や助成金を申請する際は、以下のポイントを押さえておくことが成功のカギとなります。

必要書類を事前に整備する

補助金や助成金の申請には、多くの書類が必要です。
例えば、事業計画書や経費の明細書、収支計画、領収書などが含まれます。

書類の準備が不十分だと申請が受理されなかったり、手続きが遅延することがあります。
早めの準備を心がけ、必要書類の内容を確認しておきましょう。

公募期間に注意する

補助金や助成金には公募期間が設定されています。
締め切りを過ぎると申請が受理されなくなるため、スケジュールを把握しておくことが大切です。

また、申請開始と同時に必要書類を準備しておくことで、スムーズに申請を進めることが可能です。

事業計画を具体化する

補助金や助成金を申請する際には、具体的かつ実現可能な事業計画を作成することが求められます。
計画書には、目標や必要な資金額、予想される成果を詳細に記載しましょう。

実現性が低いと判断される内容や不十分な計画は、審査で不利になる可能性があります。

補助金・助成金活用の注意点

補助金や助成金を効果的に利用するためには、以下の点に注意が必要です。

審査結果が予想外になる場合がある

補助金の審査結果が不採択となる場合や、申請額が減額されることがあります。
このような場合に備え、他の資金調達方法や追加の計画を準備しておくことをおすすめします。

事務作業が増える可能性がある

補助金や助成金の申請や報告には、多くの事務作業が伴います。
事務処理の負担を軽減するため、専門家に相談したり、チームで役割分担を行うと効率的です。

補助金・助成金の効果的な活用のコツ

補助金や助成金を活用することは、資金調達や事業拡大において非常に有効な手段ですが、制度の特徴や手続きを十分に理解しておくことが重要です。
ここでは、補助金や助成金を活用する際の具体的なポイントや注意点を解説します。

制度の内容を把握する

補助金や助成金は、それぞれ目的や条件が異なります。
例えば、補助金は主に新規事業や設備投資を対象とし、助成金は雇用促進や人材育成などに重点を置いています。

制度の概要や適用条件を正確に理解することで、自社にとって最も適した支援策を選択することが可能となります。

申請期限に注意を払う

補助金や助成金には申請期限が設けられており、この期限を過ぎると応募が受理されません。
公募開始時期や締切日を確認し、早めに準備を始めることが大切です。

スケジュール管理を徹底し、必要書類の作成や申請手続きを余裕を持って進めることで、申請ミスを防ぐことができます。

事業計画を具体化する

補助金や助成金を申請する際には、明確で現実的な事業計画が不可欠です。
計画には、事業の目的、具体的な取り組み内容、必要な資金の使途、期待される効果を詳細に記載する必要があります。

審査では、事業計画の実現可能性が重要視されるため、しっかりとした裏付け資料を用意することが成功の鍵となります。

補助金・助成金の利用後も計画的な管理を

補助金や助成金の支給を受けた後も、適切な管理が求められます。
領収書や証拠書類の保管、事業進捗の記録、成果報告書の作成など、事務処理が多岐にわたるため、早めの準備が必要です。

これにより、事後の監査や報告義務にも迅速に対応することが可能となります。

補助金・助成金を活用した事業成功例

補助金や助成金を活用することで、多くの事業者が成功を収めています。
ここでは、具体的な事例を紹介し、その活用方法と効果について説明します。

事例1:IT導入補助金を活用した業務効率化

ある中小企業では、IT導入補助金を活用して在庫管理システムを導入しました。
これにより、在庫の過不足をリアルタイムで把握できるようになり、業務効率が大幅に向上しました。
結果として、年間の在庫管理コストを約20%削減することに成功しています。

事例2:ものづくり補助金による新製品開発

別の企業では、ものづくり補助金を活用して新しい製造設備を導入し、新商品の開発を実現しました。
補助金により資金負担を軽減し、高品質の商品を短期間で市場に投入することが可能となりました。

これにより、新たな顧客層を獲得し、売上高を前年比30%増加させる成果を上げました。

事例3:キャリアアップ助成金での人材確保

ある個人事業主では、キャリアアップ助成金を利用して非正規雇用者を正社員に転換しました。
これにより、従業員のモチベーションが向上し、離職率が低下。
さらに、企業イメージの向上にもつながり、求人活動でも優秀な人材を確保できるようになりました。

まとめ

補助金や助成金は、事業の発展や資金繰りの改善において非常に有用な手段です。
それぞれの制度の特徴を把握し、適切に活用することで、事業の成功確率を大幅に高めることができます。

ただし、申請や利用には多くの手続きが伴うため、事前準備を十分に行い、スケジュール管理を徹底することが重要です。
補助金や助成金を最大限に活用し、持続的な事業成長を目指しましょう。

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