ビジネス運営に欠かせない「資金調達」
経済状況が悪化すると、ビジネスの進行が滞り、最悪の場合、利益があっても倒産に至る危険性があります。
したがって、現在資金調達が困難な状況にある場合は、融資の利用などを通じて改善を試みる必要があります。
本稿では、資金調達の重要性に加えて、状況の悪化がもたらす影響、資金調達の強化に役立つ融資およびその他の手段について詳しく説明します。
資金繰りの向上を目指すビジネスオーナーの皆様は、ぜひご覧ください。
ビジネス運営において欠かせない資金調達とは?
資金調達とは、常に現金を確保できるように企業の収支を管理することを指します。
事業を成功させるためには、単に収益を上げるだけでは不十分です。
収益があっても現金が不足すると、経営が継続できなくなり、黒字倒産に至る可能性があります。
そのため、数か月先までの収支を予測し、資金不足の期間を特定して、事前に対策を講じることが不可欠です。
資金調達が重要な理由
「ビジネス運営において資金調達が重要」とよく言われますが、その理由は主に以下の2点です。
支払い不能や黒字倒産の防止
資金調達を怠ると、現金が不足し、従業員の給与支払い、金融機関への返済など各種支払いに対応できなくなります。
支払い不能は企業の信頼を損なう原因となり、最悪の場合、優秀なスタッフの離職や金融機関・他社との取引停止につながる恐れがあります。
また、売上があっても即座に現金化できない場合、売掛金が多いと現金が不足し、経営が行き詰まって黒字倒産に至ることもあります。
支払い不能と黒字倒産はいずれも資金調達の悪化が原因です。
これらを防ぐためには、資金調達を適切に管理する必要があります。
融資申請時の重要性
金融機関に融資を申請する際、ほとんどの場合、資金繰り表(収支や資金の過不足を把握できる表)の提出が求められます。
これは、金融機関が「融資後に経営が破綻するリスク」を回避するために、事前に資金調達状況を確認するためです。
多くの金融機関は「資金繰り=経営者の最重要業務」と捉えています。
そのため、資金繰り表を提出できない場合、「資金管理が不十分な経営者」と見なされ、融資が難しくなる可能性があります。
このため、緊急時に迅速に融資を受けられるよう、普段から資金調達を徹底しておくことが重要です。
資金調達とキャッシュフローの違い
資金調達と似た言葉に「キャッシュフロー」がありますが、その意味と目的は異なります。
- 資金調達・・・常に現金を確保するために企業の収支を管理すること
- キャッシュフロー・・・事業における“既に発生した現金”の流れ
キャッシュフローは、主に過去から現在に至るまでの現金の動きを明確にします。
これを経営課題の分析や次期の収益目標設定に活用するのが一般的です。
一方、資金調達はキャッシュフローを基に将来の現金不足や余剰を予測し、必要に応じて対策を講じます。
つまり、キャッシュフローの目的は「現金の動きを把握すること」、資金調達の目的は「現金を健全に管理すること」です。
資金調達とキャッシュフローは意味と目的が異なるため、混同しないよう注意が必要です。
資金調達が悪化するとどうなる?
では、資金調達が悪化するとどのような影響が生じるのでしょうか。
給与の支払いが困難になる
資金調達の悪化は、現金が不足することを意味します。
従業員への給与支払いができなくなり、従業員のモチベーションが低下し、離職を招く可能性があります。
取引先からの信用を失う
資金調達が悪化すると、支払いが滞る可能性が高まり、取引先からの信頼を失う恐れがあります。
場合によっては、現金取引を求められたり、支払い期限が短縮されたりし、資金調達がさらに困難になることも考えられます。
投資機会を逃す
資金調達が困難になると、必要な時に資金を投入できず、投資の機会を逃しやすくなります。
既存の取引の拡大や新規事業への参入が難しくなります。
不渡りのリスクが増加
資金調達が悪化すると、例えば約束手形の支払いが遅れると、不渡りとなります。
これが金融機関に報告されると、不渡り処分が行われ、企業の信用力が大幅に低下します。
具体的には、今後の融資が受けにくくなる可能性があります。
黒字倒産のリスク
繰り返しになりますが、資金調達が悪化すると黒字倒産のリスクが高まります。
売上があっても即座に現金が入らない場合、利益があっても現金不足で経営が立ち行かなくなり、黒字倒産に至ることがあります。
資金調達改善におすすめの融資
資金調達が悪化した場合、現金を確保するために以下の融資を活用すると良いでしょう。
自治体の制度融資
自治体が金融機関や信用保証協会と連携して提供する融資です。
低金利で無担保、返済期間が長期なため、創業間もない企業や中小企業にも利用しやすいです。
ただし、3機関が審査に関与するため、資金調達に時間がかかることがあります。
資金が必要な時期が明確な場合は、計画的に利用することをおすすめします。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、小規模事業者や中小企業を対象とした多様な融資制度を提供する公的金融機関です。
「民間金融機関を補完する」役割があり、他の融資で審査に通らなかった企業でも資金調達が可能な場合があります。
金利は融資の種類や期間、資金の用途によって異なるため、事前に確認が必要です。
商工会議所
商工会議所では「マル経融資」という制度を提供しています。
商工会議所で経営指導を受けた企業は、無担保・無保証人で最大2,000万円の融資を受けることができます。
ただし、「直近1年以上、商工会議所または商工会の地域で事業を行っていること」という条件があり、創業間もない企業には適していません。
銀行
銀行の融資は限度額が大きく、多額の資金調達が可能です。
その分、審査が厳しいため、詳細な事業計画と返済計画が求められます。
銀行の融資には「プロパー融資」などがあり、低金利で限度額もありませんが、直接融資を受けるため審査基準が厳格です。
創業間もない企業や個人事業主は、事業実績が少ないため融資を受けるのが難しい場合があります。
信用金庫
信用金庫は、主に会員を対象とした融資を提供しています。
例えば、中小企業の会員資格は「従業員300人以下、または資本金9億円以下で、信用金庫の営業エリアに所在する企業」となっています。
ニーズに応じた長期・短期の融資が利用でき、資金調達の改善に役立ちます。
ただし、限度額が銀行に比べて低いため、多額の資金が必要な場合は他の融資も検討することをおすすめします。
融資以外の資金調達改善策
資金調達の改善方法は、融資の活用だけではありません。
以下に紹介する手段でも資金調達を向上させることが可能です。
資金繰り表を作成し管理する
資金繰り表は、収支や現金の過不足を把握するための表です。
現金の流れを可視化することで、「売掛金の回収が遅れている」などの問題点を明確にできます。
これにより、資金調達改善への第一歩を踏み出しやすくなります。
在庫を削減する
過剰な在庫は現金流出を増加させ、経営を圧迫します。
資金調達の改善を図るためには、在庫を適正なレベルに減らすことが重要です。
在庫管理システムを導入し、無駄な現金流出を防ぎましょう。
支払い・返済について相談する
支払期限や入金期限、返済期間・返済額について、各取引先に相談することも有効です。
例えば、入金期限を前倒しにすることで現金流入を増やし、返済期間を延長することで現金流出を削減することが可能です。
収支を適切に管理することで、資金調達を改善しやすくなります。
ファクタリングを活用する
ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に売却し、売掛金の支払期限前に現金化するサービスです。
ファクタリング会社によって異なりますが、最短即日で資金調達が可能なため、迅速に資金調達を改善できます。
まとめ
企業経営を順調に進めるためには、収支を管理する「資金調達」をしっかり行うことが不可欠です。
しかし、資金調達を怠って経営が立ち行かなくなっている企業も存在します。
そのような場合は、今回紹介した融資の活用を検討してみてください。
融資の審査に通らなかった場合は、ファクタリングをはじめとする他の手段も視野に入れてみましょう。